世界の終わり

気だるい朝、目が覚めると父が楽しげに鼻歌を口ずさみながら、トーストにジャムを塗っていました。

母はソファーに座って本を読んでいました。

とても難解な、昔の文字で書かれた本なので、私は読めません。

弟はまだ生まれません。

今はまだ母の子宮の中で、羊水に包まれて惰眠を貪っています。

私はお腹が空きました。

財布を開けて見ると、小銭がジャラジャラと入っていて、かき集めてみてもパンさえ買えません。

しょうがなく、私は小銭をジャラジャラと口に流し込み、飴のようにしばらく舐めて、飲み込みました。

少し満たされお腹に違和感が。

コンコン、入ってますか?

あれ?

どうしたのでしょうか。

窓から光が差し込み、部屋を明るく照らします。

私は小さな清潔な部屋の真ん中で座り込み、お腹の中の人に言ってみるのです。

あなたが外ですか?

コンコン、入ってるのですね。

ああ、誰に言っているのでしょう。

自分は中ではなく外にいると言います。

人はノックするのを止め、早く出てきてほしいと言いました。

私は小銭を食べてお腹一杯で、少しだるいです。

部屋の中心でうずくまり、トーストを齧る父と本を読みながらあくびをする身ごもった母を横目でちらりと見てみました。

光は窓からどんどんと入ってきて、溢れてしまいそうです。

行き場を失った光はきっと私たちの中へ逃げ込むのでしょう。

ああ光が部屋を満たしていく・・・。

小銭、トーストの匂い、母の視線、満ちる光。

全てが私を満たし、私から外へと放出されていく。

コンコン、入っているのですね。
コンコン、出てきましたよ。
コンコン、中へ入れてください。
コンコン、入りますよ。

コンコンコンコンコンコンコンコンコン‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥!!!

ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン‥‥‥‥‥‥!!!

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‥‥‥‥!!!!!!!

メリメリ‥‥。

  
         どうも。

                  はじめまして。

人は

にっこりと笑って、光を外に出した。
ほっそりとした腕で、父母を外に出した。
ジャラジャラと小銭を別の外へ。



                 ここが世界の終わり「外側」なのでしょう。
                   暖かで心地よいのです。
                  わたしたちは平等です。
                  待ち望んだものもいたでしょう。
                窓から入ってくる光は機嫌を悪くして輝きを失いました。
                  
       

あっけない‥‥  ‥‥‥‥  ‥‥‥‥  ‥ ‥ ‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥ ‥ ‥世界の終わり。