舞城 王太郎

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阿修羅ガール
少女が体験した死後の世界(?)を凄まじいスピードで、書いた三島由紀夫賞受賞の文学作品(授賞式を舞城さんは欠席しました)
目まぐるしく状況が変化する濁流文章や、超巨大文字など、もはや普通の小説の常識は通用しません。
読中読後、唖然としてました。

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好き好き大好き超愛してる。
「好き超き~」と「ドリルホール・イン・マイブレイン」の2作品収録。
「好き好き~」は題名でいろいろ誤解されそうですが、いろいろな形の愛を描いた名作だと思います。
書き出しの「愛は祈りだ。僕は祈る。」は国語の教科書に載せてほしいくらい、好きな台詞です。
好き好き大好き超愛してる。」というタイトルのセンスも逸脱だと思います。

アマゾンのレビューを見ると、『世界の中心で愛を叫ぶ』へのアンチテーゼらしいということがわかりました。
まぁ、あれはあれでわかりやすいし、みんなが読めるという点で、みんなそこまでぼろくそに言わなくても・・・と思いました。

wikipediaによると、石原慎太郎さんが、タイトルでもうダメという酷評を与えたそうです。
なんか石原さんを見る目が変わりました。

「ドリルホールインマイブレイン」は、世界を救う、頭に穴の開いた男の子の話。
無駄に描写がエロいwww

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『みんな元気。』
短篇(?)が5つ収録されています。

「みんな元気。」
家族愛のお話で、空を飛ぶ家族に妹を連れ去られた女の子の人生が描かれています。
こんなに強く、そして温かいものは読んだことなかったです。

「Dead for Good」
感想割愛します。
短いお話で、忘れちゃいました………。

「我が家のトトロ」
家にやってきた、太陽のような毛色の猫レスカのことを、娘が「夜にトトロみたいになって空に散歩に連れて行ってくれる」と言い出した。
はじめは夢でもみたのだと思い放っておいたが、嫁までもレスカをトトロだと言い出す。
トトロはサツキとメイが、辛い生活の中で生み出した「すごい友達」であり、娘が学校で自分のせいでイジメられ、嫁は仕事で疲れている、だから「すごい友達」としてトトロを求めたのか?
読んでて一番楽しかったです。

「矢を止める五羽の梔鳥」
煙か土か食い物か」の、福井県西暁町を舞台にした、山火事好きな男の話。
連続殺人事件が起こったり、友達の名前が野崎博司だったり、共通点が多い。

スクールアタック・シンドローム
これが一番好きでした。
ソファーの上で半年間、酒を飲みつつDVDばかり観ていた男の話。
とても説得力のある理屈で、「俺は責任を取るのがせいぜいであって、本人のかわりに反省はできねえよ。反省は本人の仕事だ」とか好きです。
心の病気を理由に、なにもかもに無気力な主人公は、今は何か頼るものが必要でそれが今は息子だ、というのがいいなぁ、と思いました。




舞城さんはあとがきを書かないので、まったく人物像がつかめません。
三島由紀夫賞授賞式を欠席したり、自分で装丁やイラストを手がけたり、なんだかすさまじい人だとは思います。
破壊的で、暴力吹き荒れるのに、繊細な文にもう病みつきです。