ベジタリ・ニャン

レンガの壁で囲った小さな家に、一匹の猫が飼われていました。

名前をベジタリ・ニャンといいました。

その国の言葉で『ベジタリ』は野菜を、『ニャン』は猫を表します。

ベジタリ・ニャンは肉を食べず、野菜だけを食べる菜食主義者です。

なのでそのように呼ばれるようになりました。

ベジタリ・ニャンには一匹の友達がいました。

鼠のピクルスです。

仲良く屋根裏を走り回ったり野菜を齧ったり日向ぼっこをしたり。

ピクルスとベジタリ・ニャンは本当に仲良しでした。

ある日飼い主のおじさんの会社が倒産しました。

おばさんも悲しみました。

夕焼けの町並みの中、とぼとぼ夕食の買い物に出て行くおばさん。

ピクルスとベジタリ・ニャンは、野菜が少なくなりお腹が空きました。

街で食べ物を探す毎日を送りました。

おばさんは家の野菜が減っているのは二匹の仕業だとわかっていました。


鼠でも狩ってくれないと、そろそろこの猫もウチじゃ飼えないわ。


ベジタリ・ニャンは一人でお昼寝をしているとき、聞いてしました。

おばさんが自分を追い出すかもしれない。

ピクルスには聞かれていません。

ベジタリ・ニャンは悩みました。

どうやって生きていけばいいのだろう。

友達。

狩り。

肉。

命。

にゃあうにゃあうと唸って昼も夜も悩みました。

ベジタリ・ニャンの家にピクルスが遊びに来ました。

いつも遊ぶ広場にベジタリ・ニャンが来ないので心配したのです。

ベジタリ・ニャンはお昼寝中でした。

ピクルスが近づいてベジタリ・ニャンの鼻先をつつきました。

すると口をぐわあっと開けてピクルスをぱくり。

そのままごくりと一飲みしました。

おばさんはベジタリ・ニャンの狩りを見ていました。


よくやったね、これからもウチで飼ってあげる。


ベジタリ・ニャンが最初に食べた肉は友達でした。

ベジタリ・ニャンはおばさんににゃおんと鳴いてみました。

初めて食べた肉がとてもおいしかったからです。