禁断症状5秒前!

部屋の床に転がる二つの枕。
それを足で脇にどかす。
邪魔だ。
そしてベッドの前に辿り着き、たった今足蹴にした枕を一瞥する。
何も見なかったかのように首を元の位置に戻し、ベッドにゆっくりと横たわる。
そこには枕はいない。
お前は床で寝てろ。


ああああああーーーーー!!!!

ダメです。
やばいです。
まるで海図のない船旅のような睡眠。
枕がないと、頭が安定せず、なんだか体さえふわふわとどっかに行ってしまいそう。
枕を抱いていた時はそんなことなかったのに。

枕に対してきつく当たる自分に気付く。
本当は枕と戯れたい。
枕を抱いて眠りたい。
でも今は、禁止をしているんだ。
もしこのままの関係でいれば、僕は枕がないと外で寝ることができないくらいに枕に依存してしまう。
それはよくない。
辛いけど、僕は枕から距離を置かなくてはならないんだ。
さっきだって足蹴にしちゃったけど、本当は抱き上げてぎゅっとしたかったんだ。
一瞥して何もなかったように装ったけど、本当は未練がましい視線だったに違いない。
ああ、枕を抱いて眠れないだけで、こんなになってしまうなんて。
改めて枕の大切さに気付かされる夜。

昨日で3日目。
こうやってベッドの中で布団に包まりながら枕のことを考えて悶絶している自分を認めたくない。
でも、枕への思いは募るばかりで、もうはちきれてしまいそうだ。
枕にそれが伝わると、枕の方も辛くなってしまう。
だからこうやって今は枕にきつくしておいて、枕に僕のことを忘れて欲しい。
僕はこんなに悶絶している自分の姿を枕に見られたくなくて、悶絶の後に自分を恥じた。
もしかして見透かされているかもしれない。
この自分の枕への気持ち。
それじゃあ禁まくらの意味がない!
あぁ―――枕。
枕………。

僕は、せめて枕への思いを抱いて眠った(なんだこれ)