眠り市

世田谷ボロ市みたいに、眠りに関するものを売る市場。
ねむりいち。
ねむいち。
眠市。

枕通りを通って、布団辻を曲がる。
気絶した徹夜明けの作家と、不眠症の和尚さん。

煙草を吸って朦朧として眠ろうとしてる人がいる。
お酒でぐらぐらになって眠ろうとしてる人がいる。

眠り市にいるのだから、枕と布団を買えばいい。
アロマと羽毛に頼ればいい。

たくさんの出店の前で皆眠そうな眠り市。
目の下に濃いくま染み付けて品定め。

十秒が二時間になる魔法の薬もある。
保証書付きなのでよく売れる。

時刻は零時二十五分。
BGMは霜を踏みしめる音。
最適な気温は小春日和。
口の中は麦茶の味

横には誰もいない寂しい夜。
夢を見るなら誰もいなくて嬉しい夜。

昨日の明日の今日になって眠り市は大盛況。
思考の及ばない世界への切符が高値で売れに売れる。

眠り市を練り歩くチンドン屋は夢を散歩するかのように静か。
まるで役立たずだが依頼されているからそこにはいる。

零時二十五分を指で表わすとグーチョキパー。
長針が短針に負けて勝つおあいこの時刻。

皆薄目で辺りを見回す。
手には睡眠薬が溶けたコーラ!!!
睡眠薬が溶けたコーラ!!
温かくて不味いコーラ!!
睡眠薬が溶けて苦みばしるコーラ!
理想から程遠いコーラ!!

麦茶を飲んだら枕に頭を乗せて布団被って歩行者天国で寝るしきたり。