図書館で食われる

夜、戸川純さんの玉姫様を聞きながら日本史の勉強中、俄(にわ)かに外がごろごろとうるさくなった。
こりゃ雷だね。
雨も降るだろうから洗濯物取り込もうってベランダに立つ僕。


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                      カッ!


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                   ドズーンッ!




ってな具合で雷神様大騒ぎ。
玉姫様の眼光が稲妻なのに加えて雷も煌(きらめ)くもんだから、うるさいったらない。
雨はすぐに止んだけど、一家でオリンピックの女子陸上の選手の脚の長さをすごいすごい言っていたら、神奈川県の西では注意報?警報?そんなんが出てるとニュースで流れた。


今朝も少し天気が愚図つくが、外出に支障のないほどのお湿り。
涼しいので徒歩で隣駅の図書館へ出かけた。

図書館で4才くらいのお兄ちゃんが妹とはしゃいでいた。

「いっぱーーい! ほら、言って?」
「いっぱーい、いっぱーい♪」
「いっっっぱーーーい!!」
「いっっっぱーーーい♪」

楽しそうに騒ぐ二人の傍らで料理のレシピ本を物色する母親。
兄貴があまりに大きな声を出したら小さく注意する以外は特に止めないので、二人はいっぱいいっぱいと元気に叫びまくる。(注意された直後は「いっっ、いっっ」とフェイントしてた)


こんなにたくさん本があるんだから、実は僕だって「いっぱい! 本いっぱい!」と叫びたいのだ。
でも高校生ともなると分別とか理性とかいうものがあるので(悲しい成長)そうもいかない。
叫ぼうとすると羞恥や恐怖が脳を支配するのだ。

羨ましい二人はその内ビニール傘を綱に見立てて電車ごっこを始めた。
「しゅっしゅっぽっぽーー^^」
「お兄ちゃん待ってよ~(泣)」
車両分離や脱線を引き起こしながら、二両編成の電車は貸し出しカウンターへ向かう母親の背中を追いかけていった。
事故るなよ~。

キノコの図鑑をにやにやしながら眺めていると、三人の子供づれが隣でわいわい。
父と母が新着本をチェックしていると、父に抱きかかえられた女の子が本を見て「おっぱい、おっぱい」とひたすら連呼しているのだ。
二秒くらいの間を空けてリズムカルに繰り出される可愛い「おっぱい」。
もしもさっきの兄弟とこの子が競演していたら、僕は冬虫夏草の魅力そっちのけで腹を抱えて笑ったろう。


閲覧式のソファーで寝ていた浮浪者が職員に注意されて「もう来ねぇよ!」「来ないでけっこうです」というやりとりをやってるのを聞きながら、食虫植物の飼育法の本を読んでいた。
しばらく静かな時間があったのだが、閲覧スペースの窓から見える空き地で初老の作業着の男が機械で雑草をねちねちと除去し始めた。
うわんうわんと唸る駆動音に加え、モデルルーム建築のために資材を運ぶ大型トラックが目の前の道路を何度も行き来し、がるぁがるぁどどどと地響きのような音が響く。


がるぁがるぁうわんうわんどどど他の方に迷惑になるのでうるせえもう来ねぇよぴんぽんぱんぽん館内放送です先日置き引きがありましたのでお荷物の管理には十分お気をつけくださいがるぁがるぁうわんうわんどどどおぎゃーおぎゃー借りていいーー?借りていいーー?ママどぉこぉ!?ごほんごほんうわぁっくしょん!がるぁがるぁどどど

「いっぱーいいっぱーい」の一つでも叫びたくなる絶望的に喧(やかま)しい館内。
でも思春期をとうに終えた僕にはそんなことは出来ず。

何故か図書館で疲れてる僕。
赤ん坊の泣き声というものは精神を圧迫する何かがあります。
さっさと本来の目的であるところの「冬虫夏草の種類を調べてメモする」を果たし、太宰治の『晩年』を借りてそそくさと退散。


パヒュームがヒットしたんだからどさくさに紛れてテクノポップがもっと興隆しないかな、とか考えながらP-MODELを聴きながら帰宅(ながら族)。