黄金睡眠

ある国に、めっちゃくちゃ怠け放題な若い男がいました。

男は「二度寝の気持ち良さは何にも耐えがたい、ずっと寝ていたいくらいだ」などとほざいていました。

男だって、一度は女の人とお付き合いしたことがありました。

ですが、男のあまりの寝坊での遅刻、めんどくさがり、優柔不断に、彼女も愛想を尽かしてしまいました。

それ以来、男のダメ人間ぶりに拍車がかかりました。

怠け放題、好き放題。

親からの援助で、なんとか生きてはいけてますが、もはや死んでいるも同然の暮らしぶりでした。

睡眠大好き、仕事嫌い。

家で寝てばっかりの生活を続けて、かれこれ3年。

朝と夜、区別つかない。

もう廃人も同然です。

「廃人と俳人って似てるね。廃人松尾芭蕉

眠る日々

集めて早し

3年間」

男は松尾芭蕉をこれ以上ないほど馬鹿にし、三食のうちのどれに当てはまるのかわからない食事をしようと、ぶっちぎり万年床の部屋から台所へ移動します。

ワンドアタイプの正方形の冷蔵庫を開けると、けったいな服装の少女が体育座りで詰められていました。

「まだ夢の中だったか、お~い起きろ俺ーー!」

「夢じゃないかもよ!?」

少女は体育座りのまま男に言います。

「さぁ、驚きの真相はあたしをここから出すことで明らかに!お兄さん早く出したって」

男は少女を冷蔵庫から引っ張り出し、帰れ、とだけ言いました。

「冷た!てか反応それだけ!?これだからファミコン世代は………。あたしはステキ妖精ポコ!ダメダメなあなたを見かねた神様のじっちゃんが、あたしに更正してこいって命令しやがったから今ここにいるわけ。あんたの陰性な人生を陽性に!」

「だれもそんなもん要請してねぇ、帰れ。」

「イケズ~、話しを聞くぐらい許されるべきだわ」

「じゃあ言えよ」

「めんどくさいから、あたしの魔法(?)であなたの願いをかなえてあげる。それで少しは人生明るいわ」

「全然本人のタメにならねえじゃん、神様とやらにどやされるぞ」

「大丈夫、神様はいちいち部下の仕事を監視してたりしないわ。本当はあなたみたいなクソダメシネ人間、人として一から養成してあげたいくらいだけど、あたしそういう面倒なことは嫌いなの。だからあたしのステキな魔法(?)でパパっと(建前上の)解決!」

「さっきからお前のカッコの中がすごく気になる………」

男はもうすっかり少女のペースです。

こんな年端もいかぬ少女にペースを乱されるあたりも彼らしい限りです。

「では願いを言いやがれってやんでい!」

「(意味わかんねぇよ)じゃあ、腹も空かないで、トイレにも行かないで良くて、ずっと寝ていられる体が欲しい」

「つまりずっと寝て遺体、ってこと?」

「いやな漢字をあてるな………。『ずっと寝ていたい』まぁそういうことだな」

「んじゃこの『ステキステッキ』で闘魂一発解決!」

ポコはどこからともなく『ステキステッキ』を取り出し、男に向けました。

「それ、俺にはバールに見えるが?」

「違うよ、『バールのようなもの』だよ?あたしはステキステッキって呼称してるけど」

「全国共通、万人共通でバールって呼ぶだろ………」

「さぁて、お兄さんのセリフに三点リーダが多くなってきたところで、とっとと始めますか!」

「お、おい何を!?」

ポコは『ステキステッキ』を振り上げ、呪文(般若心経)を唱えはじめました。

「渇!」

そして、男の頭に振り下ろしました。

ぱん!

男の頭が爆ぜました。

……どさっ。

男は倒れました。

「今日も今日とて一発解決!ポコは明日も元気です!」

死んでいたようだが、たしかに生きていた男は、ポコの一撃で夭逝(‘ようせい’若死にすることだよ♪)しました。
男の願いはキチンと叶えられました。

……………………………………………………………………………はっぴ「いいえ」んど