備忘録の変遷♪ (+小説「指祭り」)

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深夜、男Aが田舎の田園風景の中をアロハシャツに短パン、雪駄といういでたちで歩いていると、蝉や犬の遠吠えに交じって、どこかから祭囃子が聞こえてくる。 
(SE:お囃子)

男B「急げ急げ~!」
女A「待ってよ~」
男A「ん、なんだ?」

男Aの隣を若い男女が一組、通り過ぎる。
二人とも顔には笑みをたたえていて、うきうきした様子である。
男Aは訝りながら、二人が行く方向が祭囃子の聞こえる方向だと気づく。

男A「こんな深夜に祭りか、よし、どうせ暇な身だ、ちょいと覗いていくか」

男Aは歩きに歩いた。
しかしなかなか会場に辿りつかない。
音をさえぎる物が少ない田園、音が死なずにはるか遠くから聞こえているような
それでいてどこかすぐ近くでやっているような、距離感を失う不思議な感覚を味わう音だ。

男Aが山の入り口に立ち、そして決意してから一時間ほどけもの道の中を歩いてたどり着いたのは、なんとも奇妙な祭り、「指祭り」の会場であった。
櫓(やぐら)にでかでかと垂れ幕がかかり、そこには向きがばらばらの、人差し指の写真がプリントされていた。
視界がぐるぐると回ってしまう奇妙な櫓を中心に据えて、人々は輪になって盆踊りを踊っていた。
しかし、踊りと言ってもそれは指先をちょいちょい動かしているだけのもので、ステップはリハビリ中の老人のようによちよちとしていて軽快さがまるでない。

男A「なんだ……これは……」

男Aが愕然としていると、櫓の上で大和太鼓を叩いていた男がマイクを握り、こう言った。

男C「今年も始まりました! ゆ・び・ま・つ・りぃ~~~ッ!!!」

民衆が両の人差し指をとんとん叩き合わせて、静かな、それでいて威圧的な拍手……いや、拍指をした。
男Aはよくわからず、何もできずに立ちつくしてしまう。
すると、先ほどのカップルの男の方が声をかけてくる。

男B「お兄さんも、ほら、指、指」
男A「こう……ですか?」
男B「そうそう!」

男Bは興奮して、指を天に向けてずんずん突き出す。
男Aは苦笑いをしながら、そっとそのしぐさを真似する。
一体ここはなんなんだ、この祭りは……。
男Aは少し怖かった。
わけのわからなさは他にもあった。
時折、男女が指をつんつん突き合わせてE.T.のごときしぐさをしているのだ。
それをした男女は中睦まじく笑い、そして藪の中に消えていったり綿あめを頬張って得々としていた。

しばらく男Aが茫然として輪の端っこで見学していると、男Cの話が終わり、またお囃子が始まった。
やがてお囃子は熱を帯び、激しさを増し、民衆は体全体で動けないもどかしさを紛らわすかのように、より一層指をくねくねちゃらちゃらさせて踊りに熱っぽさを加えていた。
割合若い者が多かったが、中には老人もいる。
指の動きだけなら若い者にも負けん、という勢いで指をしゅらしゅらと動かす。

男は踊りを眺めながらも、自らの指をひゅらひゅら、控え目に動かしてみた。
なるほど、たしかにこの踊りはやってみると楽しい。
ステップがよちよちしているもどかしさで、指をぶんぶん振るので、興奮やエネルギーが指の先から目に見えない光線のようにほとばしるのを感じるのだ。

ああ、これはいいな、と思ってひゅらひゅらしていると、男Cがまたもマイクを握る。

男C「さぁさみなさん! 力が溜まってきたでしょーー!! 指を宇宙に向けて、そして目をつぶりましょう! みなさんの精力、胆力、若さ、やる気、元気、エナジー、天神様にお贈りいたしましょう!」

男Aは、盆踊りのように見えて、この祭りはお盆とはなんの関係もないことに気付いた。
そして、些細なことはどうでもよく思え、皆がやるように指を上に向けて、目をつぶって、ひたすら祈った。

目を開けると、皆そーめんのようにくにゃくにゃになって地面に伸びていた。
みんな、倒れながら、白目を剥きながらも人差し指を天に向けていたのだ。
男Aも膝が笑って、立っているのすらだるいような感じがしたが、なにしろその光景が恐ろしくて、急いで山を降りた。
男は自分の指がちゃんと十本あるのを確認し、そしてもう二度とあのような会合に顔を出すまいと決めた。
指が芯から冷たかった。





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我がブログ、「言々・言々」が三周年を迎えました!
これもひとえに、読んで感想をくれるみなさんのおかげです、ありがとうございます!
三年ともなると、このブログの最初の雰囲気を知る人はもはやおらず、「まっち」がやっていた「タラチネマチ~ネ」というブログの存在など闇の中だったりします。
それでは昔の自分が可哀想なので、ここでこのメモ帳みたいなブログの短い歴史を振り返ろうと思います。



まず2006年の夏休み、このブログが生まれた時。
今ではめったに連絡を取り交わさなくなった友人、HN「タラちゃん」という人と一緒にブログを始めました。
中学校の同級生で、高校に上がった時は別々の学校だったのですが、たまたま自宅でパソコンをおかずに遊んでいたら、ネットラジオをやろうという話が持ち上がったのです。
もともと、携帯電話の録音機能でラジオごっこをやるのが好きだった僕は、マイクを買ってラジオをやろうというのに乗り気でいました。
しかし、いざマイクを買おうという段で、ケチな僕がお金を出すのを嫌がり、無料でできるブログにしようということになりました。
その時、ノートに痛々しい絵日記を書いていたのですが(ハサミで破砕して捨てました)、ブログというものに興味があったのです。
写真を載せて、日々のことを綴っていき、そこで生まれる交流、というのに興味があったのです。

その日の内にヤフーのIDを取得し、「タラチネマチ~ネ」という名前のブログを開設し、デジカメで写真を撮ってうひうひ腹を抱えて笑いながらプロフィール文をこさえました。
記事を更新しては、何人訪問者があった、というのを嬉しがりました。
コメントがあって、ファンがあって、少しずつブログの面白みを理解し始めました。

しかし、写真を中心にして、実験的に文章をいじって遊ぶことにどんどんハマっていく僕(当時のHN「まっち」)とは対照的に、飽きてきた様子のタラちゃん。
コメントをなかなかもらえないので、記事を更新することがつまらなくなり、そして更新頻度が二カ月に一回になったあたりから、僕が「ちゃんと更新しようぜ、なんかネタあげるよ、企画物やろう」と促さないと書かなくなりました。
そして、一年くらい書かなくなったあたりであきらめた僕は、他の友人に声をかけて、一緒にブログやろうと提案しました。
そして「タラちゃん二号wwww」と颯爽と現れた友人は、いくつかつまらない文章を書いて、飽きてフェイドアウトしていきました。
はっきりいって、飽きっぽい人を迎えてしまったことは僕が悪いです。
わかっていたのに、その場ですごい盛り上がってしまって、引くに引けなくなってしまった僕は、面白くない相方に二回も嫌な気持ちにさせられました。

小説を書いたり詩を書いたり絵を描いたり、他のブログにコメントを残したりワード検索で見つけた興味のあるブログをファン登録したり、いろいろと努力を重ねて、ファンの数や訪問者が少し増えても、やっぱりたかが知れている、微妙な数字になっていました。
それでも、コメントがもらえたらものすごく嬉しくて、携帯電話で一時間おきにコメントチェックをする、ブログ中毒者みたいな感じになってしまいました。

こんな中毒みたいなのよくない、と思いながらも、ダジャレみたいなことや、自己満足の詩を書いていた高校二年のある時期に、ぱったりとコメントが途絶えてしまった時期がありました。
中毒みたいになっていた僕は、ひたすらコメントが欲しくて、飢えて、受け狙いをしたり、関心を引こうとタイトルを思わせぶりにしたりと、暗中模索し、目にクマを作りました。
しかし、プライベートで嫌なことがあってささくれた心に、ブログにコメントの来ない毎日がのしかかり、「マジでヤベー感じ」になってしまった僕は、ブログをやめて、ジョギングとかしながら健康になろうと思ったのです。

しかし、そこでとある人からコメントが来て、詩をほめてくれたり、小説に感想を残してくれたりするという嬉しい出来事がありました。
陳腐な表現ですが、砂漠で出会ったオアシスのようなコメントでした。
それから、少し心を入れ替え、肩の力を抜いてブログを書くようにしました。
いろんな人のところに気軽に訪れて、前よりもっとフレンドリーにコメントを残しました。
小説サークルという、集団に属してみました。
あれよあれよとファン様が増え、真面目な意見のやり取り、コアな趣味の話などもできる環境ができました。
これが大体高校三年生の受験期だったと思います。
だから、僕は大学受験の時期が人生で最も明るかったような気がします。
それまでが暗かったので、反動でどんどんと明るくなったのでしょう。
多少、異常なまでに他人と知り合うことに喜びを見出しました。
恋は実りませんでしたが、友達が増えました。
この時期は、毎日日記を書いていたと思います。

ブログやっててよかったなぁと思いながら、大学生になり、そしてまぁあんまり大きな変化もないまま今に至ります。
日記が一番記事数が多くて、その次が缶コーヒーの感想、次が詩となってます。
絵は最近描いていませんが、らくがき大好きなので、また暇なときを見つけて気持ち悪い虫の絵をUPしたいです。
小説は、長くなる予定のものを書いています。
詩は、受験期くらいから技巧的なものを意識するようになり、自分では少しずつ上達している気がしています。
日記は暗い話題を極力避けて、読んでる人が楽しくなる話題を優先して書いていくつもりです。







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冷夏とは言え、暑いものは暑いのが夏。
涼しくなればと思って、オチのない小説を書いてみました。
指の写真は、二代目タラちゃんがやってくる直前の記事で使っていたものです。
どうぞ、コピーして加工して、みなさんのブログでも使ってみてくださいな(笑)