湯冷めしたいお年頃

湯冷めしたいお年頃。

火照った体を湿らしたまま部屋の窓を開け放し、裸で床に寝転ぶ。

題名もよく知らないピアノの音楽を流して、目を閉じ聞き入る。

体が爪先、腿、尻、背中、腕、首、と冷えていく。

肢体は冷ややかなのに頭だけはのぼせたまま、逆に温かになっていく。

湯冷めしたいお年頃。
湯冷めしたいお年頃。
湯冷めしたいお年頃。
湯冷めをしたい湯冷めをしたい湯冷めをしたい。

冷えていく、冷めていく。
火得ていく、覚めていく。

まだかな、そろそろかな。

湯冷め。
死体。
落とし。
ゴロ。

温かな恍惚に包まれ、眠くなる。瞼は重くてとても上がらない。

意識が持っていかれる・・・・・

「くしゅん!」

やめたやめた。
馬鹿らしい、阿呆らしい。

目を開けて窓を閉めて服を着て暖房をつけてベッドに寝転ぶ。
音楽は流しっぱなしで、目をまた閉じる。

冷ややかになるのは早かったけど、温かになるのはじんわりと緩やかだ。


意味もなく冷めるのはもうやめよう。