ヒポロポタマス

「やや!? 向こうを歩いているのは一体なんだ!?」

「ヒポロポタマスってんだよ」

「ヒポロポタマス……カバかい?」

「うん、カバだけど、六本木に住んでいるヒポポタマスだからヒポロポタマス」

「そうかい、カバの分際でいっちょ前にスーツなんか着やがって、腹に据えかねる」

「カバの分際でな」

「あの太ったやつもヒポロポタマスかい?」

「いや、あれはどっかの会社の社長さんだろ」

「ヒポロポタマスの親子みてえだな」

「壮観だね、どうも」

「おや、社長さん大きなあくびだね、顎が外れやしねえか心配だ」

「人間の口があんなに大きく開くもんかね。ありゃどちらもスーツを着てるから判りにくいけど……」

「どっちもヒポロポタマスだあね」

「俺ぁなんだかどっちでもよくなってきたよ」

「本当、カバな話だわな」