三つの詩

「人間が挟まってます」

溢れて淵からこぼれ落ちた液体がだーっと街に

電車図書館電器屋海川山
どろりと緩やかに流れて収束する液体

「大変です! 扉に人間が挟まってます!」

「緊急です! エスカレーターに人間が挟まってます!」

「急患です! 海溝に人間が挟まってます!」

だーっと挟まってます
だーっと挟まってます
だーっと挟まってます

責任者は誰だと唸ってます
睨んでます
叫んでます
もがいてます

だーっと挟まってます
だーっと挟まってます
だーっと挟まってます

悪者は誰なんだと嘆いてます
恨んでます
怒ってます
諦めてます







「大丈夫、未来は無責任に明るいよ。」

大丈夫、未来は無責任に薔薇色だよ。

今を戦う人にとって未来は必ず明るいの。
頑張っていれば道は開かれるの。
必ずだってば!

大丈夫、未来は無責任に明るいよ。

春の木漏れ日の中で笑える日々が絶対待ってるの。
努力の末に報われるの。
絶対だってば!


―――頑張ってない人?
―――努力してない人?

知らないよ。
死んだらいかがですか?







「祭り」

フランクフルトを二本食べてラムネサイダーで流し込む
咥え煙草で焼きそばを焼いているおじさんにも僕は腹を立てない
今夜は何にも腹が立たない

水風船のヨーヨーが割れて神社の境内に打ち捨てられている
あんず飴の芯に蟻が群がっている
ペットボトルがゴミ箱から盛大に溢れている
僕もそれらに倣ってフランクフルトの串を子供たちに向かって投げ
ラムネサイダーの瓶を叩き割って振り回した

今夜は何にも腹が立たない
素敵な夜

僕の踊りも激しくなって
大好きなあの娘のふっくらして可愛いほっぺたを
瓶で傷つけてしまう

あの娘のお化粧した可憐な顔がくちゃくちゃになって
涙で濡れてひどく醜くなった

僕はその時急に醒めてしまって
つまらなくなって
つまらんと呟いて
ちょっと腹が立った