一人の女

私はフェリーの雑魚寝式の船室に一人。
ダウンジャケットをハンガーにかけ、タンクトップに地味な色のカーディガンを羽織ってクリーム色のスラックスという姿になる。
備え付けの汚らしい、捨て犬色のブランケットを四つ折りにして枕がわりにし、硬い床にあおむけに寝転がる。
若い男女が二人、ささやく声が目立って聞こえる。
ぽつぽつと歯抜けになったスペースがある船室、二つ隣で黒いスーツを着た壮齢の男性が缶ビールで早目の晩酌をしている。

出航すると、フェリーは細かく揺れ、機械類の獰猛な駆動音を鳴り響かせ始めた。
私は黒い洋服の詰まったトランクに錠を落とし、男性を夕食へ誘おうと、彼にそっと歩み寄った。
女の一人旅は、あまりに辛かった。