詩? 詩!

1,
どうしてこんなに退屈なんだ! (あなたが退屈な人だから)
どうしてこんなにむなしいんだ! (あなたがむなしい存在だから)
どうしてみんな僕に冷たい! (あなたも冷たくしてるから)
どうして優しくしてくれない! (あなたが優しくしないから)
どうしてだろうか (ない知恵つかって考えて)






2,
「そんなことよりさ――」

ここ最近、妙に羽振りのよい友人が僕に話しかける

「ポレポレ通りでメシでも食って、午後は円山町ですっきりしようぜ!」

僕が腹を空かせればファミチキとコーラをくれる
僕が悶々としていたら風俗に連れて行ってくれる
僕が絵を描きたかったら筆と絵の具をくれる

「そんなに暗い顔すんなよ! あ、それとも踊りに行こうか?」

僕が踊りたいときはシューズをくれる
僕が泣いたときはそっとハンカチで涙を拭ってくれる
僕が落っこちそうなときは手を差し伸べてくれる

「お前タバコ吸うだろ? 火ぃつけてやるよ、ほら」

僕が僕が僕が僕が くれるもの もらう くれるから もらう
友人に僕は何をあげることができるのだろうか
僕が友人にプレゼントをしたいとき、僕は、何か、何を、どうやって

「そんなこと気にすんな、俺は平気だ、気にすんな」

ダメだ、これは友情じゃないよ
教祖と信徒のような関係だ
僕は彼が舐めろと言ったら喜んで舐めてしまいそうだ

「アホか、俺は可愛い女の子が大好きだよ!」

いつも眠いなぁ






3,
家の近所の神社は「大田山」の広大な土地を所有している
大田山は緑深く、奥へ行くとそこはケモノやムシたちの世界だ
古くから鎮守の森としてこの町を守っている
肥沃な湿った土からは、人の心をおかしくする気が出ていると言われている

カブトムシを取りに山深く入りこんだことがある
小学生だった僕と、まだ幼稚園児だった妹と二人で
妹は早く帰ろうと言って、僕の袖をひっぱりながら泣き叫んでいた
僕は一人で帰ればいいだろうと言って、それを放っておいた
僕はもはやカブトムシのことなどはどうでもよかった
ただただ、森の奥を見てみたかったのだ
妹があまりに泣き、そして僕の袖を引っ張るので、僕は頭に血が上ってしまった
妹の頬をひっぱたき、うるさい静かにしろ、と怒鳴りつけたのだ
僕は殴るという行為で自分自身を興奮させてしまった
そして妹ははらはらと涙を流しながらも、僕に対する恐怖で声を上げなくなった
黙ってついてくる妹を従えて、僕は山の深みへと潜った

結果から言うと、日が暮れそうになったくらいにお腹が空いたので、僕は妹を連れて家に帰ったのだ
もう二十年くらい前の話になるか
妹には殴ったことを親に密告しないよう、きつく口止めをしておいた
僕が山の奥へ入ったこともだ
山の奥には何もなかったし、人を狂わせる気なども出ていなかった
ただ、そんなものがなくても人はおかしくなってしまうものだ、というのは子供心に理解できた
人間の狂気は外から与えられるのではなく、はなから自らの内部で息をひそめているものだ
あの日、僕が殴った妹は僕に狂気の本質を教えてくれた

大田山を管理している神社の住職はもうそろそろ限界だろう
もし住職が亡くなっても、遺族は教育の場としての「山」を売り払わずに、そのまま放置しておいてほしい
もしもそこにコンビニや自動販売機やホテルや駐車場ができてしまったら
その大田山は少年少女たちにトラウマのように、脳にくっきりと刻む啓蒙が行えないだろうから







4,
自らの感情を 認めたらいい
怒っているんだ 今、僕は
悲しいんだ 今、私は
楽しいんだ 今、俺は
そうやって そういう風に

さては
朝顔の観察をしっかりやってこなかったね、君?








5,
いつまでカミソリで遊んでいるんだ
今日はこんなにいい天気

いつまで包帯、顔に巻いているんだ
君はそんなに美しいのに

いつまで血を流しているんだ
あなたそんなにイケメンなのに

いつまで体育座りしているんだ
歩いて隣の県まで行けるの知らないのか

いつまで痛い辛いって歌ってるんだ
バンドメンバーと打ち上げとかしないの

いつまでたってもお子様で甘ちゃん
いいじゃん、焦っても転んで危ないよ








6,
ピンチヒッターの孤独を知ってるか
満場の観客と敵チームと味方チームとマスメディア
それらの視線が、思念が彼をややこしくするんだ
プレッシャー感じて歯を食いしばったら 奥歯が砕けてしまいそう!
だから彼はガムをくちゃくちゃさせながら飄々と
だから恰好つくんだよね だから痺れるんだよね

ほらほら! ピッチャーびびってる!
つってもさ! ピンチヒッターにだって家族がいる!
ほらほら! 奥さんが応援席からエールの嵐!
んなこと言ってもさ! 彼だって機械じゃねぇ!