制作日誌3

12月15日
「ポリヘドラル」の歌詞を完成させる。

「臨海の窓辺から枯らす声ほどのマグナム」
母音の響きだけでスッと口をついたものをあまり推敲せずに貼り付けるように使う。
自動筆記の散文のようでいて、意味はしっかり通る。

12月16日
「ポリヘドラル」の歌、トロンボーンを録音。
空気を多く含んだ歌い方だと音程が揺れずに歌える範囲が狭い。
あまり当てていかず、流れで歌う。
トロンボーンのソロのようなパートで苦戦、同じ8小節を30分ほど繰り返してしまう。

完成してから「Polyhedral」は「多面体の」という形容詞なので単体で「(a) Polyhedron」にタイトルを変更。
長らく文章における「視点の位置」についてぼんやり考えていたのを少し書けてよかった。
キュビズム絵画のように、対象に正面から肉薄する視点と、そのときの主体を俯瞰する視点を同平面に映してしまう幽霊カメラについての歌。

主体と客体を同じ俎上に並べて見ている、人称のない主人公。
それを映す「ポリヘドロン」と個人的に呼ぶ観念的なカメラ。
さらにそれさえを見つめる超現実の視点。
それらを行き来することがアルバムに通底する歌詞の世界観、じゃないかな?

12月22日
短いピアノ曲を作るつもりでずっと練習していたら、歌がついた。
一日中シンセを触って、最終的に7トラックほどのシンプルなものに落ち着いた。
タイトルはまだ浮かばないけど、アルバムの一曲目に「プロローグ」として入れようか?

12月23日
リズムボックス(TR-66)のプリセット「BOSSA NOVA」にのせて「プロローグ」のテーマを混ぜたコード進行のピアノとベースを録音。
曲の構成を「一回だけ出てくるBメロ」「唐突に場にそぐわないセブンスを混ぜてしまう」など考えてこねくり回していたが、冷静になってみると非常に意地悪でサムく感じたので素直にアレンジした。
不協和音すれすれのシンセの根音とベースの絡みがひやひやする。

12月24日
起きてすぐに聞き返すとひやひやしていた箇所がアウト寄りのアウトだったので弾きなおし。
ベースとぶつかるシンセのピアノをアルペジオで弾いたらすっきりした。
昨日の集中力が途切れたので、午前中にそれだけやって切り上げ。

昨日作った新曲をDAWで微調整、先月作った「アンテナ」のイントロを編集しなおし。
……後日もう一度しなおす。