火災「無」感知

二階の部屋で少女が机に向かって勉強していた。

定期テストが近い、それも進路に関わってくるような大事なテスト。

彼女は高校2年生で、家族構成は両親と自分の3人暮らし。

自分の部屋があり、そこそこ豊かな家庭だ。

木造二階建ての一軒家。

ヘッドフォンで音楽を聴きながら彼女は数式を前にして唸る。

「う~………今回マジやばいかも」

唇を尖らせ、独り言を洩らす。

その時、突然彼女の背中が人の手により突付かれた。

「―――――――」

父親が口を動かして何か言っている。

鬱陶しそうな顔で彼女はヘッドフォンを取り、父親に向かって怒鳴る。

「ちょっと!勝手に部屋に入らないでっていつも言ってるでしょ!?」

「いやいや、ノック何べんもしたんだけど、返事がないから入っちゃった。ヘッドフォンのせいか」

「で、何の用?」

明らかに機嫌の悪い顔で少女。

「勉強がんばってるから何かお夜食でも、と」

明らかに悪気の無い顔で父親。

「そりゃご苦労。適当に甘い物が食べたい」

「はいはい、ホットケーキ焼いてあげるからね」

「わかったから、とっとと出て、、け!」

父親の背を足蹴にし、部屋の外に追い出し扉を閉める。

「まったく。鍵閉めよ」

かちゃり。

錠の落ちる音はとても小さかった。




「もうそろそろ出来たかな」

数十分が経った頃、とても香ばしいニオイが漂ってきた。

少女が相変わらずヘッドフォンを装着しており、大音量の音楽を聴いている。

だから自然と独り言も音量が大きくなる。

鼻をヒクつかせながら少女は最後にこの問題を解いたら居間に出てホットケーキを食べよう、と決めた。

ついでに、「さっき背中蹴ってごめん」を父親に伝えようとも。



最後の問題はなかなか難しかった。

こんなことならその前の問題が終わったら行くように決めておけばよかった、と軽く後悔する。

よし、いい調子だ、あとはあの公式に当てはめれば解は、、、ん?

「―――――!!――お!―――!ぉ!!」

「あ!また勝手に、、、え?」

父親が再度勝手に部屋に入ってきている、そして何か必死の形相で少女の袖を引っ張る。

少女の思考は一瞬停止する。

さっき鍵を閉めたのになんで父親がここにいるのだろう?

ドアを見る。

木造のドアはノブのところが徹底的に破壊されていた。

「ぁ!」

そしてそこからはどす黒い煙が室内に流れ込んでくるのだった。

父親は急に力が抜けたように、その場に座りこむ。

ヘッドフォンを取り、父親を見る。

「もう無理だ」

「へ?」

父親の力ない口調、台詞。

「キッチンで俺のせいで。母さんは。もう逃げて」

「ちょっと!早く逃げ、、、」

「もう無理だ」

父親は力なく首を振る。

「玄関が炎で崩れた天井でふさがれた………」

そして、ヘッドフォンの暴力的な大音量から解放された少女の耳にも聞こえた。

天井が、壁が、家具が燃えて崩れていく音が。

「ドアがとても頑丈で開かなくてな。母さんにはすぐに行くと言っていたが」

父親の顔は数十分前のもとよりも明らかに老けていた。

「もう無理だろう」

周りは火に囲まれ、玄関はふさがれ、身動きさえできない。

「お前の部屋のドアを蹴り破るのに、以外と力が必要でな。ごめんよ、もう無理だ」

‘もう無理だ’と繰り返す父親。

少女は走り出していた。

死ねない理由は無いが、死にたくない理由ならある。

死ぬ確率は高いが、死なない確率だってある。

少女は窓を体当たりで割り、そのままの勢いで燃え盛るベランダに転がり出る。

両手でがばりと起き上がり、縁に足をかけて跳ぶ。

後ろで腑抜けた父親が見守る中、燃え盛る炎をバックに、ススまみれの少女は夜空を跳ぶ。

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部屋で大音量で音楽を聴いていたら、いきなり肩を親に突付かれ、飛び上がるほどびっくりしたときに思いついた(妄想した)物語でした。

意味不明ですね。