『雑然の歌: 習作』メモ帳の切れ端

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六畳ある自室の茶色いフローリングの床、白い壁は三方向に立ち、一方はベランダに面した大きな窓。

堅く冷たい無機質な床に膝を両腕で抱えて座る少女。
部屋の中央に存在する。
膝頭に額を押し付けていて、窓の方に体を向けている。

何かに憤りを感じている険しい表情だが、今にも泣いてしまいそうに弱々しい。
口角が片方不器用に曲がっていて、それが少女が何を考えているのかわからなくさせている。
少女自身、わかっていない。
怒り、悲しみ、そして何故か笑いたくてしようがないこの衝動。

少女は恐くなって部屋に一人で座っている。
今にも大粒の水滴を零しそうな黒い雨雲、少し突けば世界を水浸しにする。
少女の黒目はまさにそんな雨雲で、塩辛い水で潤った愛しい両目はこっちが泣きたくなるような悲哀を発散している。

眉間に隆起した山脈は旅人の命を絶つことに無上の喜びを感じる冷酷なもので、激しく皮膚を裂く鞭を心の深層に想起させる。

そして笑いだ。
これが最も恐ろしい。
こんな時に浮かぶ笑いの正体は何だ?
私たちは知っている、狂いだと知っている。

だが少女は決して狂っていない。
少し疲れているだけだ。しかし自らの中に沸き起こる今までに体験したことのない雑然とした感情は、未熟で脆い少女にとっては自分が狂ってしまったのだと錯覚させる恐怖を与えた。

少女はすっかり怯えてしまい、自室に篭って顔も上げずに堅くなっている。
まるで家具の一部になろうとしているように。
堅く冷たい家具の一部になろうとしているように。