対話

――ちょっとそこの殺人鬼みたいな目をした少年


「なんですか」


――こんな夜中に一人で団地を歩くなんて、なかなか思春期してるね


「ほっといてください」


――いやいや、僕も数年前までそういうことやってたんだよ


「今もやってるじゃないですか」


――今夜は用事があって歩いてるから違うよ


「じゃあ僕、もう行きますから」


――待てよー、本当は話しかけられて嬉しいくせにさー


「そんなことないです」


――缶コーヒーおごるよ? そこのベンチで座って話そうよ


「……あの」


――タバコは吸う? 


「吸いません」


――駄目だよー、もっとカッコつけようよ


「いったい何したいんですか……」


――僕もね、夜に歩くの好きなんだよ、だから仲間見つけて嬉しいんだよ


「勉強で疲れたから気晴らしに散歩してただけです」


――本当のところ、どっかに死体でも落っこちてないかな、とか


「思ってないです」


――焦げ臭いにおいを探してたり


「しないです」


――じゃあエロ本か


「……」


――あたり!?


「ちょっと」


――あはは! だよねー、やっぱ探すよな。 でもね、今の時間帯はダメだ


「え?」


――どっちかというと早朝の方がいいよ。 河原沿い、もしくは住宅街を歩いてごらん


「ありますか」


――あるある、草むらにやゴミ集積場にね


「タバコ、もらっていいですか?」


――いいけど、ちょっとキツいかもしれないよ


「いいです、初めてはちょっとキツめな方がいいって、僕、思います」


――いいね、きっと君は僕みたいになれるよ