異国のサイケデリック

「異国のサイケデリック

坂道を懸命に上る車椅子の女
通りすがりの男がそっと後ろから押してやる


ブータンのロック歌手、シタールネムリは真昼の埃臭いカフェにてLSDの見せる夢色桃幻郷への旅路の途中、けたたましいホルンの音を聞いた。  天から延びる巨人の手に引っこ抜かれるような感覚を連続で味わい、はたと正気に戻ったとき、ネムリは数回射精をして下着を汚してしまったことに気がついた。 ユーレカ! と叫んだ。


ちょうどそのころ、坂の中腹で男女が同時にくしゃみをして笑った







「音楽から逃げる男」

えげつない情愛を唱える歌曲
腐ったドーナツ油が鼻をつく

手に付着した塩素系の漂白剤
刺激臭だがクセになる

喘ぎ声のような歌唱法
子供の耳には有害だ

ぬらぬら滑るタイル張りの床
熱湯まいてモップで残虐

ミューハラ・ノンストップ
残酷は終わらない

ミューハラ・ノンストップ
深刻は伝わらない

目 肩 腕 腰 耳 耳 耳