散文詩、もう一篇


顔があって人があるのか、人があって顔があるのか 顔を見るのか、人を見るのか 考えてみて拘泥してみたら「考えすぎ」な人になってしまう
芸術が先にあって顔があるのか、顔が先にあって芸術があるのか 顔が嫌いなら芸術も嫌いになるのか ミーハーなのか
顔 顔 顔

顔には穴がいくつか開いている
吸い、聞き、見て食べる
空気を音を何かを何かを
そして汗を出し、鼻水を出し、よだれを出し、涙を出し、歌をうたう
何か心の動きや体の変化に応じて

その穴は人間にはほとんど備わっている 有名人も美人もクリエイターも 学生も子供も女も音楽家も 宇宙飛行士 数学者 金物屋の主人 米屋の看板娘 エジプト人 アメリカ人 日本人 あとは主婦やサラリーマンの顔にも
顔が芸術を紡ぐことはしないが、芸術もまた顔を生まない
体と脳みその信仰があって、そこに芸術や宗○が、悪徳や化学が生まれる
穴を埋めると顔は死ぬ 芸術は穴を埋めたごときで死なない 






無題1
でっかい木があってね、じゃくじゃくのその肌に触れて、引っ掛かりになるところに指の力をこめてうんしょ、体重をふわり、してね、上に行こうとするの。リズムカルに登るとね、気持ちがいいんだ、今ぼくがとっても高い所にいて下の友達たちがありんこみたいに小さくなっていることだって忘れて、どんどん太陽のある暖かい所に向かうんだ。木の表面を小さい虫がたくさん這っていて、菌類、シダ類が寄生しているのがよく見えると少し気分は落ち込むけど、友達になろうとして少し気持ちが歩み寄ったら、気持ち悪かったもろもろがとても魅力的に見えてくる。鳥が飛んでいるのを横目で見ながら、ジャックと豆の木のお話を読んでいたときみたいに爽快な気持ちで登って行く(静かに暮らしていた巨人を殺して平然として笑っていられる憎きジャック!)。だんだんと指が引っ掛かりを探すリズムが狂ってくると、前進の疲れを意識せざるをえなくなってね、スニーカーが太い枝を踏むみっしりいう音がちょっと怖く聞こえてきて、折れるんじゃないか、このまま落っこちるんじゃないか、って意識が「地面」に行ってしまうことがあるんだ。でも、そうするとネガティブは実際に起こってしまうから、僕はポジティブを望んで、ひたすら引っ掛かりを探して指を無我夢中で振り回すように木の表面をじゃくじゃくじゃくじゃく。寒くなってきた。指先が凍える。けど諦めるもんか。酸素が薄くなっていく、肺胞が痛いよ、でも諦めるもんか。ってやっている内に木が腐って、朽ちて、根元からぽっきり。僕はぽーんと宙に放り投げ出されて、走馬灯を見てしまう。けど、顔面を指でなぞってみるとひげもじゃになってしまっていて、驚いた僕は叫び出しそうになるけど、声が出ない。もう声の出し方なんて忘れたよ。おじいちゃんになるまで木のぼりしていて、成り行きで宇宙にまでやってきてしまって、ふわふわっとそのまま星でもなんでも掴んでさらに上に
行こうとする馬鹿な僕。このままもっと上に行けば、なにかあるはずなんだ。ありんこどころか、もうウィルスくらいになってしまった友達、もっと上に行けば、新しい友達がいるはずなんだ。友達を見捨てることは辛い。ありは? 見捨てるのはまぁできるけど殺したくはないかな。ウィルスは? 見捨てることも余裕、殺すことも余裕。見限ったウィルス。
星がどこにもなくて、ふわふわ漂っている僕を助けてくれる友達はどこにもいない。もっと上に行きたい。でも下にも戻りたくなってきた。涙は四方八方に散って行ってしまって、もうどっちが上だか下だかわかんない。





無題2
四角くってな! そんでぜんまい仕掛でな!
うるっさい音させて動いてな、と思っって放っといたら森みたいに静かやんけ!ってなもんや。
ラーメンを食べるときに鼻水が垂れる、メガネのレンズが曇る、ちょっと勘弁してよとんこつがおいしいときに! ってなる感じを味わうことになってしまう!
俺は百年間寝てたい。千回夢精したい。
バチカン四国。お遍路さん二時間で巡れる。
スラム団地。愛と青春のどん底漫画。
俺は間違い探しをしたい。そして知らんぷりし続けたい。
迷路をやりたい。還暦になるまで出られないものをくれ。
60歳のおじいちゃんと20歳のお姉ちゃん。
15歳の少年と30歳のOL。
なんとドラマが起こらなそうな組み合わせ!
ロマンスの欠片もない!

俺を引っこ抜いてくれ! と絶叫してぴょこぴょこジャンプ。地面を空だとしたら俺たちは空を飛んでいる、という言葉遊び。言葉ストレッチ。てか妄想。妄想以下。
結局変化を求めているけど自分から行動しないんだ、彼らは、だれか素敵な人が声をかけてくれて、そのまま私の人生を変えてはくれないだろうか、危険なのはちょっと嫌だし、親に心配かけるのも嫌だけど、てなもんだ。爆弾やるから夜歩け。
刺激がなくては……死ぬ――――――――――――わけではないけど退屈なのは息が詰まって内側に溜まったガスが汚いような気がする。ナイフでちょん、あ、パーン。

246号線沿いの汚い古本屋に入ったらエ口本ばっか、エ口ビデオばっか。目が桃色に熟して寒風吹きすさぶ往来に逃亡。「君、18歳未満なのにエロス的なものを見たりしたね、悪い奴だ。犯罪的だ。警察はこういうときに法律や民法とかに従って働いて、君みたいな悪ガキを懲らしめたり牢屋とかに入れたりするぞ」あ、警官のコスプレをしたお隣の自閉症のみっくん。みっくんは馬鹿みたいなことを言ったりしたりするけど、本当はすごく頭がいいから、牢屋(みっくんの部屋)まで行って話を聞いてあげることにする。で、みっくんは僕と同い年だよね、そういうことに興味はないの? でもみっくんは顔を真っ赤にしてリボルバー式の拳銃(本物だぜ?)に目を落としながら、ふるふる震えるだけ。こっわ。僕は246号線には悪魔が棲んでいると思う。みっくんは悪魔じゃないんだけど。拳銃も悪魔じゃないんだけど。みっくんはだぼついた警官の服装を脱いで、ジャージに着替えて、「頭が痛いから寝ることにします、何故なら眠ると体力が回復して体調がよくなったりするのを知っているからね」と言って寝袋のチャックを開けて、埃を舞わせながらミズチみたいに口を開けたそれに入って眠ってしまった。みっくんは頭がいいけど、それを表現するのが苦手だ。そういう人って本当にいるんだよ。