わかれのことば

往来の桜の花が散り始めている。
君たちは、その光景を見て美しいと思ってほしい。
決して、そこで「諸行無常」だなどと口にしないでほしい。

沈む夕日の赤色を見ても同じだ。
そこになにか意味をつけて、ああだこうだ議論しないでほしい。
ただ赤色に身を浸して、沈んでいくのを感じてほしい。

何百年、何千年という未来は考えなくていいし、何億年もの未来というものはそもそもどこにも存在しない。
君たちには(もちろん僕にもだが)ただ現在があるのみだ。
(過去はもう過ぎ去っていて、やってきた現在に吸収されている。未来は今朝の夢)

過去でひたひたになった脳味噌は役に立たないから、捨て去ったほうがいい。
桜を見て「諸行無情」だなどと呟くことで、存在しない過去や未来を見てはいけない。
君たちには現在しか存在しない。