5分で書いた物語『取れちゃった、きみちゃんの、首』

僕の友達のきみちゃんの首が取れちゃった。
横からふうふう息を吹きかけていたら「臭い、臭い!」って避けて、そのままぐるぐると避けていたら、ぶちって切れちゃった。
きみちゃんの本名は佐藤公秀。
さとうきみひで。
音読みしたら、さとうこうしゅう。
もってこいの死因。
だと思う。

取れちゃった首はごろごろとバイト先のスーパーマーケットに向かった。
僕は後をつけた。
そして、自動ドアが開かないきみちゃんを手伝ってやる。
ありがとうとは言わないで、ふて腐れたような表情でふんっとだけ言ってきみちゃんは先に進む。
「おや、佐藤君じゃないか」
先輩であろう初老の男性が声をかけてきた。
きみちゃんが、これまでの経緯をかいつまんで話すと、男性は首をかしげた。
すごく急な角度で傾げるから、取れちゃうんじゃないか心配だ。
幸い首は元の角度に戻り、きみちゃんに告げる。
「それじゃあこれからはもう来なくていいよ」
きみちゃんはちょっと悲しそうな表情でごろごろと店から出て行く。
僕はまた後をつける。
きみちゃんは河原に来ていた。
「クビになっちゃったね」
「首だよ」
「あっははははは」
僕は大きな声で笑ってやった。
首がないきみちゃんクビになった。
あははははは、ああ可笑しい。
涙が出る。
「あははは………ふう。ごめんね?」
「うん、いい」
きみちゃんはこのまま土手を転がって川に入っていきたいって感じだった。
僕はそれを止める気はないけど、もし本当にきみちゃんが川に落ちたら嫌だな、と思った。
首から上だけのきみちゃん、少し俯いて。